ライフスタイル

【女医監修Q&A】肌荒れや生理痛も改善!? 低用量ピルのあれこれ

【女医監修Q&A】肌荒れや生理痛も改善!? 低用量ピルのあれこれ

Created date

Up date

近頃、よく耳にする「低用量ピル」。一昔前までは、避妊のためというイメージが強かったけど、最近では、生理痛や生理不順、生理前のむくみ、腹痛などの症状が出るPMS(月経前症候群)の治療のために処方してもらう人が多いみたい。また、肌荒れやニキビの改善にも効果ありとの噂。内科医の石原新菜先生に「低用量ピル」のこと詳しく教えてもらいました!

監修:石原新菜(いしはら にいな)医師
監修:石原新菜(いしはら にいな)医師

イシハラクリニック副院長、ヒポクラティック・サナトリウム副施設長、健康ソムリエ講師。漢方医学や自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察のほか、わかりやすい医学解説と親しみやすい人柄で、講演・テレビ・ラジオ・執筆活動と幅広く活躍中。

【Q&A】教えて! 「低用量ピル」のこと

「低用量ピル」についてみんなが持っている素朴な疑問を、石原先生にズバリ聞きました!

【基礎知識編】

Q そもそも低用量ピルって何?

ひとことでいうと、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」という2種類の女性ホルモンが配合されている薬のこと。

このホルモンは月経や排卵のバイオリズムに深く関わっていて、排卵や生理周期をコントロールすることができます。

低用量ピルは、21錠もしくは28錠がワンシートになっています。
28錠のシートでは、21錠のホルモン成分が入った実薬を毎日決まった時間に服用し、7日間はホルモンの成分が入っていないプラセボ(偽薬)を服用します。

21錠のシートは実薬のみなので、自分で7日間の休薬期間を取る必要があります。
ホルモンが入っていないプラセボは何のためにあるかというと、飲み忘れを防ぐためです。

Q 飲むとどうなるの?

低用量ピルの実薬を飲むことで血中の女性ホルモンの量が増え、脳が「もう女性ホルモンは十分」だと錯覚し、卵巣の働きを止めます。

休薬期間(プラセボを飲んでいる時)は、脳が「女性ホルモンが足りない!」と判断し、休んでいた卵巣が再び稼働し、排卵が起こるという仕組みです。

薬をやめてから2〜3カ月くらいで自然な生理周期に戻る人が多いですね。

Q どんな人が飲むといいの?

  • 毎月ひどい生理痛に悩まされている

  • 生理周期が不順で、なかなかこない時もあればすぐにくることもある

  • 頭痛や腹痛、むくみなど生理前の不調に悩まされている

  • 生理前後のニキビなどの肌荒れがひどい

  • 相手任せにせず、自分でも避妊手段を取りたい

上のような人にオススメです。月経前症候群(PMS)や、子宮内膜症の症状の緩和や改善が期待できます。

女性の70~80%に生理前後に何らかの症状があり、そのうち約5%の人は生活に支障をきたすレベルだといわれていますが、医師の診察を受けずに我慢しているという人も多いです。

症状がある場合は、低用量ピルの服用で女性ホルモンを体内に取り込み、本来の働きを補助したり抑えたりすることで、PMSが改善されることもあります。

Q 逆に飲まない方がいい人は?

  • ひどい偏頭痛のある人

  • 妊娠中、出産後6週間以内、授乳中の人

  • 高血圧の人

  • 血栓症・心筋梗塞などの病気にかかったことがある人

  • 35歳以上の人で1日に15本以上喫煙する人

若い人でも喫煙の習慣がある人にはあまりオススメできません。ピルの作用の一つに血液が固まりやすくなる働きがあり、血栓症のリスクが挙げられます。喫煙することで、より血液がドロドロした状態になりリスクが高くなるため、喫煙者には向きません。

低用量ピルのデメリットを記事下の項目でまとめているので、チェックしてくださいね。

Q 保険はきくの?

身体に不調がなく避妊目的だと自由診療となりますが、月経や排卵に関する不調があり、医師の診断が下りれば保険適用になります。

Q 費用ってどのくらい?

医療機関にもよりますが、一般的に自由診療で1カ月約3,000円前後※でしょうか。

治療のためだと保険が適用されるので、上記より安くなるでしょう。

※初診料や診察代は除く、薬代として

【副作用編】

Q 副作用はない?

服用し始めには、吐き気や胸のむかつき、頭痛、むくみ、乳房のハリや痛みなど、妊娠初期のような症状が出ることも。

また、少量の不正出血があることも。
しばらくすると多くの人は治りますが、症状が続いて気になるようなら医師に相談しましょう。

Q 太ったりしない?

これはよく質問されますが、低用量ピルに体重を増加させる作用はありません。

過去にはホルモン量が多いピルが使用されていたこともあり、そのイメージなのかもしれませんね。

 

また、低用量ピルの成分である女性ホルモンには、体内に水分を溜めやすくする作用があるため、むくみの症状が出て「太った」と思うことがあるのでは。

服用を中止すればむくみは改善されるので、心配はありません。

Q 将来赤ちゃんができにくくなったりしない?

低用量ピルの服用が不妊につながることはありません。
低用量ピルを飲んでいても、服用を中止すると通常1〜3カ月で自然な月経周期に戻り、妊娠が可能になります。

長期で服用している場合でも影響はないといわれていますので、不妊の心配はないでしょう。

【服用編】

Q 飲み忘れちゃった時はどうするの?

毎日決まった時間に飲むことを習慣にして、もし飲み忘れた場合は気づいた時に飲み忘れた1錠だけ飲み、服用時間が来たらもう1錠を飲みましょう。
2日以上連続して忘れた場合は、気づいた時点で2錠飲み、その後は予定通りの服用を。

飲み忘れた期間に性交渉をすると妊娠する可能性もあるので、妊娠を望まない場合は注意が必要です。

Q 低用量ピルを止めたらどうなるの?

1〜3カ月で自然に元の月経周期に戻っていきます。
もし低用量ピル服用前にPMSや生理痛などの重い症状がある場合は、症状が戻ることもあるので注意が必要です。

Q ほかの薬を飲んでもいい?

病院から処方されている薬を服用している場合は、その旨を医師に相談しましょう。
薬局で市販されている薬については、一緒に飲んでも心配ありません。

Q 何歳くらいから飲んでいいの?

基本的には月経が始まる年齢から可能ではありますが、日本では多くの医師は、発育が安定する中学生くらいから処方することが多いようです。

低用量ピルのメリット・デメリット

「低用量ピル」にはいろいろなメリットがあることがわかったけど、デメリットってあるの?
改めてメリット・デメリットをまとめました!

メリット デメリット
月経周期を正常に 血栓症のリスク
生理痛を和らげる 脳卒中のリスク
子宮内膜症の減少 心筋梗塞のリスク
ニキビ・肌荒れの改善
卵巣の病気の改善
骨粗鬆症の予防

血栓症のリスクは、低用量ピルを服用している人で1万人あたり3〜9人(服用していない人では1〜5人)の割合で発生するといわれています。

前述したように、低用量ピルには血液が固まりやすくなる傾向があります。水分をあまり摂らない状態が続くと脱水症状を起こし、血液が濃縮されてドロドロの状態になり血栓症を引き起こすことも。
普段から水分は十分に摂るように心がけましょう!

また、偏頭痛がある人は脳梗塞のリスクがあるので、医師の診察時に必ず相談しましょう。

メリットとしては上記のほかに、飲み忘れなければ99%の避妊の効果があること、また大事なイベントや旅行の日に重ならないように生理日のコントロールができることもうれしい効果です!

さらに、卵巣がんのリスクも低くなるともいわれています。卵巣は、毎月の排卵で大きなストレスを受けています。低用量ピルの服用により卵巣がお休みすることでストレスから解放され、がんの発症を抑制すると考えられています。

生理でお悩みがあるなら「低用量ピル」は役に立つ!

低用量ピルは、生理にまつわる悩みがある人に大きなメリットがあるので、悩んでいる人は一度医師に相談してみて!
「低用量ピルは月経やPMSの治療に役立つ薬ですが、普段から身体を冷やさない、適度に運動する、規則正しい生活や食生活を心がけることも、とても大切ですよ」と、石原先生。
まずは、生理や自分の身体を知ったうえで、正しく低用量ピルを使いましょう!

 
イラスト/ayaka illustrator
構成・文/本間香奈、vivace

あわせて読みたい

関連記事